統合報告書の優良事例の紹介 2015

中外製薬株式会社

回答者:
佐々木文子(広報IR部 広報&e-Comsグループ 課長)
櫻井貴之(広報IR部 インベスターリレーションズグループ 課長)
加藤正人(CSR推進部 社会貢献グループ グループマネジャー)
森恵美子(CSR推進部 企業倫理推進グループ グループマネジャー)

ガイドライン準拠ではなく、
「読者目線」にこだわり続けることが大切。


「中外製薬」独自の強みを、
幅広いステークホルダーへしっかり発信したい。

当社は2002年に世界的製薬企業であるスイスのロシュ社と統合し、ロシュ・グループのメンバーとして自主独立経営を続けています。欧州をはじめ統合報告への取り組みが活発化していることは認識していましたが、当社が2013年春に発行するアニュアルレポートから統合報告を開始したのは、純粋に当社のことをよりよく理解してもらいたいという想いからです。

2010年代後半にトップ製薬企業になるという目標に向け、社員の意識醸成を図るプロジェクトが2009年に開始されました。その活動を通じて可視化された当社独自の強みを含め、非財務情報を多くのステークホルダーに伝えることが、当社のより深い理解、そして企業価値につながると考え、統合報告に踏み切りました。



広報を担当するグループが旗振りとなり戦略的な視点で企画・構成まで対応
レポートの質と作業効率の双方を向上。

当社にとって初となる統合報告書「アニュアルレポート2012 〜社会責任報告書 統合版〜」は、従来のアニュアルレポートを統合報告書とし、広報IR部 IRグループの主導で制作したものです。これに先立ち、CSR情報は2010年の段階で「詳細情報=Webサイト」「ダイジェスト=冊子」という2つのコンテンツで情報を発信していました。

統合報告書の内容については、CSR情報の冊子のエッセンスを投資家目線でアレンジすることである程度完成度の高いものが制作できました。それに比べて苦労したのが、制作体制の方で、特に社内、社外スタッフとのコミュニケーションです。1年目はIRグループ、CSR推進部がそれぞれ外部の制作スタッフとやりとりしていましたが、効率的とは言えませんでした。そこで2年目以降は、社会一般の方への広報を担当するグループが窓口として業務を一本化。企業ブランディングとの整合を図り、中外製薬独自の強みをはじめ当社を理解していただくための情報を統一したメッセージで発信するなど、より戦略的な視点で企画・構成にも携わるようになりました。

こうして広報を担当するグループの旗振りのもとに、IR、CSRも含めた各組織が一定の体制で管理され、「企業価値の創造」という観点で、社内の関係部署と活発な議論が繰り広げられるようになりました。その結果、「統合思考」の意識が社内的に高まり、企業としての競争力向上にもつながり始めているようです。



アナリスト・投資家との対話にもとづき、
本当に必要な情報を、分かりやすく発信する。

2012年度版発行当時は、「国際統合報告フレームワーク」も公表前で、ベンチマークとなるレポートもほとんどない状況。まさに手探りでの編集でしたが、製薬業界や医薬品に詳しくない一般の方にも理解していただけることを目指しました。

たとえば「寛解」というような業界独特の表現は分かりやすい言葉に置き換えたり、業界全般の動向などを記した「基本情報」をこれまで以上に分かりやすいものに改善しました。この基本情報は最新のアニュアルレポートでも14ページにわたって掲載し、ご好評をいただいています。

一方、GRIガイドラインについては、もちろん重要なガイドラインとして参考にしていますが、「準拠ありき」とは考えていません。重要なのは読者目線であって、本当に必要な情報が掲載されているか否か、アナリストや投資家からのご意見などを参考にしながら、自らチェックする姿勢が大切だと思います。

▲「アニュアルレポート 2014」 100〜101ページ(PDF: 125KB)



将来の価値創造を、その源泉となる強みとともに伝える。

2014年度で3冊目となる当社の統合報告書ですが、最大の訴求ポイントは、当社独自の強みがいかにして将来の価値創造につながるか、という点です。その説得力を高めるためには、当社が培ってきた強みを深く理解してもらうことに加え、これまでに当社が中・長期的に成長してきた実績を示すことが重要と考えています。

具体的には、当社独自の強みを「7つの強み」に集約して分かりやすく示すとともに、2014年版では16〜17ページの財務・非財務ハイライトも工夫しました。11年間の成長度合をグラフで可視化し、経営に関する重要なイベントもあわせて掲載することで成長の要因とその時期も示しました。

▲「アニュアルレポート 2014」 16〜17ページ(PDF: 145KB)



4つの部門ごとにビジネスモデルを制作。
担当者に意図を説明することに時間を要した。

制作にあたっては、幅広い部署・部門の理解、協力の重要性を痛感しています。たとえば2013年版では、国際統合報告フレームワークのビジネスモデルの概念を当社独自に解釈し、「研究」「開発」「生産」「マーケティング」の4つの部門ごとに図式化を試みました。

しかし、各部門の担当者に草案を示したところ、反応はいずれも「これは一体・・・何?」。当然ですが、相手はフレームワークなど知りません。そこで一つひとつ、根気よく丁寧に説明していったのです。最後は「それならばこの題材を取りあげた方が良い」などと前向きな提案も得られ、結果として先進的なビジネスモデルを創り上げることができたと考えています。



投資家・アナリスト以外の幅広い読者からの反響も。
引き続き「分かりやすさ」を追究していきたい。

メインの読者は投資家やアナリストを想定していますが、統合報告書のターゲットとして想定しているその他のステークホルダーからの反響も多いです。

日経アニュアルリポートアウォードで2年連続準グランプリを受賞したこともあり、従業員から「読んでいます」という声を頻繁に聞くようになりましたし、当社に就職を志望する学生のみなさんも丁寧に読み込んでいる印象を持っています。読者目線に立ち、分かりやすさを追究してきた結果とすれば、とてもうれしいことですし、責任もより強く感じます。



徐々に膨らんだ掲載情報の仕分けが課題。
投資家が本当に必要な情報を見極めていきたい。

2014年版は136ページというかなりのボリュームとなっています。株主総会などの各種イベントで配布しやすいようにダイジェスト版も制作していますが、やはり本編のスリム化は今後の課題と言えます。

私たち制作スタッフも、マテリアリティの観点で再度、掲載情報を仕分けする必要があると認識しています。一方、CSR Webサイトについては「読んでもらうホームページにする」ことが最大の課題。アクセス数を上げるには何をすべきか、担当者と協議しているところです。

Focus中外製薬の社内浸透/社会貢献

定量管理が難しい活動こそ、コンセプトを大事に

ロシュ社との戦略的アライアンス締結時には、従業員にも期待と不安が入り交じっていました。そこで、新たに制定されたミッションステートメントに基づいて、会社や従業員の判断と行動の規準となる中外BCG(ビジネス・コンダクト・ガイドライン)の理解、浸透を図る研修を、当時のCSR担当部署が主体となって実施。現在でも継続的に年2回、組織単位でBCG・人権研修を行い、職場の状況や自分達の行動を振り返る機会を設けています。一方、社会に対しての取り組みで最近注力しているのが、障がい者スポーツ支援です。工場がある東京都北区の小学校で、障がい者スポーツに関する出前授業を開催し、多様性を認め合う「ダイバーシティ」推進の活動を行ったりしています。

こうした社会貢献活動は、効果測定を定量的に管理することが難しい分野です。だからこそ私たちは、企画の段階でその活動が社会に対してどのような価値提供につながるのか十分に議論し、「参加して本当によかった」と言われるような活動になることを目指しています。



中外製薬株式会社の「アニュアルレポート2014 (社会責任報告書 統合版)」は、下記のURLよりご覧ください。
http://www.chugai-pharm.co.jp/profile/reports/index.html


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